比叡平風物詩       No.005

ひえい平保育園児と
中南米からのJICA研修員の交流風景
2009.10.20  (財)国際湖沼環境委員会 嘱託 笈田 昭

1.はじめに
平成21年9月4日(金)、グアテマラ、コスタリカ、アルゼンチン、ブラジルからのJICA(日本国際協力機構)研修員9名(男性1名、女性8名)が“ひえい平保育園”を訪れ、「幼児期における自然体験プログラム」の実際を視察し、園児と交流した。

 どうしてそのようなことが行われたのか、については若干説明が必要であろうと思う。私がほとんどボランティアとして働いている“国際湖沼環境委員会”は、1986年に設立された財団法人で、世界の湖や湿地帯の保全を目的に、内部組織である科学委員会(世界の著名な研究者で構成されている)を中心に、調査研究や“世界湖沼会議”の主催などを行っているが、同時に湖沼の管理や環境教育に関する研修事業を実施している。世界的には有名な機関であるが、日本国内ではその名を一般の人々にはほとんど知られていない。今年の11月初旬に中国武漢で第13回世界湖沼会議が開催されることになっており、NHKも取材に来るそうであるから、ひょっとすると放映されるかもしれない。

 国際湖沼環境委員会はJICA研修を年に4回ほど引き受けており、ひえい平保育園にやってきたのは、「水辺を中心とした自然体験に基づく環境教育」コースの研修員で、環境省などの政府職員、小学校の先生、NPOの人などである。みな、それぞれの国で、環境教育や環境保全に関わっている。

 この研修コースのリーダーであるNPO“環境レーカーズ”代表の島川武治氏は、ひえい平保育園を舞台にこれまで前記の「幼児期における自然体験プログラム」を展開してきており、園児たちは島川氏をよく知っており、“シマッチ”(島川氏のニックネーム)と呼んで、とても仲が良い。

2.園児との初対面
 なにしろでかい外人が9人も入ってくるのであるから、園児たちはさぞかしびっくりするだろうと思っていたが、松尾まゆみ園長先生はじめ先生方の事前教育が行き届いていたためか、みんな比較的冷静に迎えてくれた。3・4歳児クラスでは歌で歓迎してくれた。一番下のクラスではちょっとびっくりしたような子もいたが、現代っ子は外国人でもどこかで見ているのだろうか、それほどは驚かないようである。5・6歳児の諸君は元気に歓迎してくれた。最近は小さい子でも海外旅行に行っているからなー。写真を何枚か見てみよう。(写真はクリックすると拡大されます。)

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写真1. 1歳児との対面(左からマルガリータ、エレン、クリスティーナ)

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写真2. 3・4歳児の歓迎(左からエレナ、オリビア、パウラ、ディアナ、 カロル、エレン)

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写真3. JICA研修員たち(左からエレン(コスタリカ)、オリビア(グアテマラ)、 ディアナ(グアテマラ)、マルガリータ(グアテマラ)、パウラ(アルゼンチン)、 カロル(ブラジル)、エレナ(グアテマラ)、クリスティーナ(グアテマラ)、 マニュエル(コスタリカ)の9名)

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写真4. 見慣れない外国人と対面中の5・6歳児(でもみんな物怖じせず、興味津々である)


3.裏山に入っての“いいもの探し”
 幼児期に自然体験をすることの重要性をひえい平保育園の先生方はよく認識しておられて、子供たちを裏山に連れて行き、山道で木の葉や木の実や枝などを集め、一番いいものを班ごとに決める遊びをした。
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写真5. 裏山でのいいもの探し(その1)

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写真6. 裏山でのいいもの探し(その2)

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写真7. 裏山でのいいもの探し(その3)


4.沢へ崖を降りる、また登る
 裏山から少し林の中を行くと、かなり急な崖があり、ロープを使わないとたやすくは降りられないところに出る。子供たちは平気で降りるが、大人は滑ってしりもちをつくやら大変。良い天気が続いていたので、下の沢にはほとんど水は流れていないが、水溜りはできている。水溜りでこける子もいる。しかし絶対に泣かない。「泣かない」と園長先生と約束しているそうだ。自然の厳しさを身をもって知ることも大切である。しばらく遊んで、崖を登る。子供たちは身軽でさっさと登りきるが、大人はそうはいかない。

 研修員たちにはこの実習(?)はかなり驚きだったようで、特に事故が起きるのではないか、その時にはどうするのか、対策はあるのか、などといった質問が相次いだ。
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写真8. 崖を降りる

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写真9. 沢で遊ぶ

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写真10. 崖を登る


5.園児たちとの別れ
 短い時間であったが、研修員たちは実に楽しそうに子供たちと一緒に行動した。園舎に戻り、質疑応答があった。代表的な意見は次の通りである。

エレナ:すばらしい。非常にダイナミックである。子供の安全を考えるとグアテマラではできない。

クリスティーナ:本当に環境教育の立場からみるとすばらしいやり方である。先生方がどのようにガイドしているかがよく分かるし、その手法が良い。

マニュエル:保護者も一緒に行けるようにもう少し道を整備してはどうか。

島川:あえて整備していないこともある。自然をありのままに経験させる。危険と自然のバランスの問題である。

ディアナ:自然をありのままに経験させることは良いが、子供たちの緊急事態にはどう対処するのか。重大なことが起きる前に対策を立てるべきである。

松尾園長:保育者が個々の子の能力を見ながら、プログラムを考えている。

 そして、園児たちとの別れがやってきて、園児たちから研修員たちに、「Welcome to Hieidaira 子どもたちが楽しんでいるあそび てまわしごま・ぶんぶんごまです 2009-09-04 大津市立ひえい平保育園」と書かれたシールが入った袋のなかにある“てまわしごま”2個と“ぶんぶんごま”1個が贈られた。
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写真11. お別れにプレゼントをもらう研修員たち


6.昼食と園長先生の講演
 お昼は、山中比叡平支所にて、谷都満子さんはじめ皆様のご厚意で作られた沢山のご馳走をいただいた。これには研修員一同大喜びで、舌鼓を打ったが、食べきれず、残してしまったのは申し訳ないことでした。谷さん、皆さん、有り難うございました。

 午後、支所の2階の会議室にて、松尾まゆみ園長先生による講演「保育園での活動」を拝聴した。ひえい平保育園の春夏秋冬の子供たちの生き生きとした行動がパワーポイントの映像で示された。そのあと、おやつの話になり、コスタリカの保育園での話が出た。

エレン:子供はフルーツなどのおやつを持ってくる。

パウラ:公立は園で出す。フルーツ、パン、バナナとか、バランスよい。

島川:ここでは一線を越えるというか、生トマトなどを出している。ご飯のときに出すと食べないが、おやつだと生トマトも食べる。

マニュエル:公立では保育園側が出すが、私立は保護者が食べるものを出している。
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写真12. 沢山のご馳走

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写真13. 松尾園長先生のお話し


7.おわりに
 この研修コースの研修員は本年8月10日から10月8日までの約2ヶ月間、琵琶湖周辺、JICA大阪センター(茨木市、万博公園近く)、大阪・舞洲、屋久島、水俣市、名古屋市などで、環境問題と環境教育について、現場、理論と様々な経験を積んで、台風18号に追われるようにして日本を離れていった。彼らにとって、日本は大変すばらしい所と思ったようである。もっとも、日本の裏の面を見る機会はほとんどないのだから、好印象ばかりが残るのであろう。比叡平保育園や比叡平の人々も楽しい思い出として、彼らの記憶の中に生き続けることを祈っている。